aluminium




「ねえ大佐、その能面づらにコツってあんの?」
「の‥‥‥」

何をしに来たかと思えば、わざわざここまで喧嘩を売りに来たのか、この小さな同業者は。

「‥‥‥もっと他に云い様はないのかね」

詰まった言葉を咳払いで押し流し、改善を求めれば、

「じゃ、その何考えてんのか分かんない薄ら笑い」
「‥‥‥‥‥‥せめて、アルカイックスマイルと云ってくれたまえ」

サラリと返され、もはや怒る気にもならない。額に手をあててひとつ溜め息をつく。すると、

「眉根が5ミリ、口角が1センチってとこ?」

先の問いを投げかけた表情そのままに、彼は云った。
そこに浮かぶのは、悪意の欠片も窺わせない純粋な興味。
そして気付く。問われたことから彼が自分に求めている立場は回答者なのだと当然のように思っていたが、 その実は、観察対象であったのだと。
観察されていたのだ。表情の変化を。
全く、これだから研究者などという人種は質が悪い。自分を棚に上げているのは承知の上で思った。
オーバーアクションで首を横に振って諦観を示し、改めて問う。

「つまり君は、ポーカーフェイスの作り方が知りたいと?」
「だーかーらぁ、始めっからそう云ってるだろ?」

焦れた子供のような口調で云い返される。いや、実際、子供なのだが。
行動と口調のギャップに、軽い眩暈を感じた。

「あの云い方で、解れという方が無理だろう」
「解れ」
「‥‥‥‥‥‥」
「何だよ、その沈黙は」

不機嫌さを隠そうともしない彼の、その軽く膨れた頬を問答無用で引っ掴む。

「ィだーーーっ!?」

よく伸びるそれを思いきり引っ張り、

「この餅には無理な芸当だと思うがね」

殊更の無表情で告げた。
むしろそんなもの、身に付けなくとも良いなら身に付けない方が良いんだよ。そう云ってやろうかと思い、 けれど口にする前に止める。
代わりに、

「ポーカーフェイスの君など、考えるだに不気味だね」

云ってやれば、感動を覚えるほど歪められた表情に僅か、胸がすく思いがした。










アルミニウム。元素の一つ。記号 Al 原子番号一三。原子量二六・九八。
土壌中の重要成分であり、紫陽花の変色反応に影響。
まあつまりリトマス試験紙のように顔色が変わるもとい表情がころころ変わると強引に接続。

...030717up

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