arsenic




「やあ鋼の。相変わらず、生き急いでいるかね?」
「ま、鈍行程度にはね。そういう大佐は超特急だろ?」

出会い頭に景気の悪すぎる挨拶をとりあえず利子付きで投げ返し、エドワードは相手の顔を見上げた。
前回別れたときと何ら変わらないように見えるそれに、けれど、若干の翳りを見て取って眉を顰める。
しまった、嫌なモノを見た。

「疲れてんの?」

気付いてしまったことを悔やみつつ、それでも気付かなかったフリをするには少し遅くて、しょうがなしに聞く。

「昨夜のデートの相手が、些か情熱的でね」
「あっそ」

やっぱり聞くんじゃなかった。そんな思いがありありと籠もった嘆息に、ロイは小さく笑って問うた。

「心配してくれるのかい?」
「してほしいの?」

逆に聞き返され、笑みは苦笑に移行する。

「そりゃあまあ」
「ホントに?」
「どういう意味かな」
「オレだったら嫌だから」

訝しみを深めた声に、あっさりとそれは返ってきた。

「誰かが心配してくれるってのは嬉しいけど、心配して欲しいかとは話が別」

動けなくなるだろ、色々とさ。
表情を歪めて続ける彼の云う、その『色々』の範囲を思い、ロイは息をつく。

「‥‥‥君の場合は、行動を規制されるくらいが適当だと思うがね」
「アンタがそれを云う?」

片眉を引き上げた冒険家の少年に、策謀家の男はにこやかに首を横に振った。





この足を突き動かす、強い思いは毒にも似て。
たとえば、じわじわと身を蝕むか
それとも、一息に心臓を握り潰すか
どちらにせよ、削り取られていく命。

死ぬために生きている。いつか、自分の選んだ、その場所で。










ヒ素。窒素族元素の一つ。元素記号 As 原子番号三三。原子量七四・九二一六。
やっぱり弱な大佐。薬と毒でそれとなく塩素とセット。
のつもりだったんですが内容的にはマグネシウムと組むかなこれは…

...030702up

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