astatine




瞼の裏で弾ける光。
来る。思うより先に躯は動いていた。枕から頭を落とすと同時に、その下に潜ませていた銃を手に取る。
直後、寸前まで喉元があった場所を白刃が襲った。深く貫かれ、詰まっていた羽毛が場違いにも幻想的に宙を舞う。それに奪われた視界に、間断なく迫り来る斬撃。銃の腹ではじき、腹筋だけで身を起こす。鳩尾を狙って繰り出された脚を、構えた肘で受け流して。返す手で少々強引にその足首を掴み、引き上げた。逆の膝を、己のそれで押さえる。動きを遮られ、力んだ躯を更に体重をかけることで封じ、眉間に銃を突き付けたら、

ゲームオーバー。

視線が絡み合うこと数秒、観念したかのように瞼が下ろされる。それでも閉じた瞳から目を離さずにいれば‥‥‥やがて、静かな寝息が耳に届いた。
相手が完全に寝付いたことを確認し、銃を元あった場所へと戻す。

「全く、寝相が悪いにも程がある」

深く嘆息する。と、ごちんと音を立てて頭を叩かれた。起きているのかと窺い見遣れば、「ぐー、かー」と呑気な鼾。どうやらそれこそ単なる寝相の悪さであったらしいが、後ろ暗いところのある男は、それを咎められた気がして苦く笑う。
戯れに殺気を放ったのは自分。
眠る彼に感じた小さな焦燥感を打ち消すために。
安らかに眠る少年はまるで普通の子どものようで、それに酷く苛立ったのだ、自分は。
そして彼が見せた普通でない反応に安堵した。同時に、そんな自分に嫌悪をも。
大きく息をつき、ロイは身を横たえた。隣に眠る痩身をそっと引き寄せ、目を閉じる。
明日、派手に散った羽毛と大穴の空いたこの枕を、どう取り繕おうか考えながら。










アスタチン。放射性元素の一つ。元素記号 At 原子番号八五。原子量二一〇。
アスタチンの語源は不安定(ギ)とゆうことで。
ウチの人々普段喋りすぎなんで喋らないものを書いてみましたが、 だからといって甘くなるわけでもないんですよね…

...030803up

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