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barium
あの月さえ着いていけない遠くまで、たったひとりで。
「君は自分を雑に扱いすぎる」
苛立ちを無理に抑えつけた声は低く重い。
「もっと上手く逃げることを覚えたまえ。それが誰を犠牲にするとしても」
「大佐みたいに?」
皮肉めかした声の主を睨みつける。関せず、エドワードは続けた。
「オレもそのうち踏み台にされるわけ?」
その言葉にロイは溜め息をついた。気分を切り替えるように軽く頭を振る。
「君など台にしたところで、少佐の前髪にすら届きはしないよ」
ムッとする少年をひたと見据えて、
「君を案じる人間のことも、少しは考えてくれたまえ」
云えば、気まずげに黙り込む小さな姿。
それでも。分かっている。今彼が脳裏に描いた面影は、きっとたったほんの数人。
気付くだろうか。彼は。行ってしまう前に。
差し伸べられた手に。気遣う眼差しに。幾つものそれに。
余りにも強く前だけを見続ける姿は、いつか。
どこまでも着いてくる夜空の月さえ着いていけない場所まで、たったひとりで走り抜けていってしまいそうで。
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