barium




あの月さえ着いていけない遠くまで、たったひとりで。





「君は自分を雑に扱いすぎる」

苛立ちを無理に抑えつけた声は低く重い。

「もっと上手く逃げることを覚えたまえ。それが誰を犠牲にするとしても」
「大佐みたいに?」

皮肉めかした声の主を睨みつける。関せず、エドワードは続けた。

「オレもそのうち踏み台にされるわけ?」

その言葉にロイは溜め息をついた。気分を切り替えるように軽く頭を振る。

「君など台にしたところで、少佐の前髪にすら届きはしないよ」

ムッとする少年をひたと見据えて、

「君を案じる人間のことも、少しは考えてくれたまえ」

云えば、気まずげに黙り込む小さな姿。
それでも。分かっている。今彼が脳裏に描いた面影は、きっとたったほんの数人。





気付くだろうか。彼は。行ってしまう前に。
差し伸べられた手に。気遣う眼差しに。幾つものそれに。





余りにも強く前だけを見続ける姿は、いつか。
どこまでも着いてくる夜空の月さえ着いていけない場所まで、たったひとりで走り抜けていってしまいそうで。










バリウム。アルカリ土類元素の一つ。元素記号 Ba 原子番号五六。原子量一三七・三四。
炎色反応シリーズ第3弾。
エドの戦い方に物申したい人。

...031114up

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