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calcium
牛乳。
牛から分泌される白濁色の液体。脂肪、蛋白質、ビタミン、糖分などを豊富に含み、飲料に供される。
―――を前に、エドワードは硬直していた。もう四半刻は経過しただろうか。始めの内はさも面白そうに見物していたロイの表情にも、少し前から呆れの色が濃く出始めている。
「そんなに悩むほどのことかね?」
ひとりごちれば、ギロリと睨まれる。肩を竦め、ロイは卓上のカップに手を伸ばした。冷め切る寸前のコーヒーを口に運ぶ。恨みがましげな視線が追ってきた。
「彼女なりの好意だろう。甘んじて受け取りたまえ」
「‥‥‥他人事だと思って簡単に云いやがって」
「他人事だからね」
ぶちぶちと呟くエドワードが往生際悪く目を逸らしているグラスも、ロイの手にしているカップも、暫く前にホークアイ中尉が手ずから運んできてくれたものだ。‥‥‥彼女がなぜその中身を選択したのかは、本人に聞いてみないことには分からないが。
まあともかく、そうしてもてなされた以上踏み付けにするわけにもいかず、こうして自らと戦い続けているエドワードである。
「嘆かわしい」
ロイが腰を上げた。歩み寄って、手を伸ばす。
「君の持ち主は、君に出来る程度のことが出来ないそうだよ」
「‥‥‥ヒトの脚に話しかけないでくれる?」
足首を取られ、、エドワードは溜め息をついた。
「つーか何で脚? 腕もあるのに掴むか、脚を?」
不可解そうにこぼしつつ、おざなりに空気を蹴ってその手を振り払う。
確かにこの手足は牛乳に関係があると云えばある。親兄弟いとこは勿論はとこでさえなく、姉の旦那の実家の隣の奥さん程度の関係だが。
鋼の焼き入れに用いられるカルシウム。彼が指しているのはおそらくそれで、だからどーしたと云いたくもあれど、駄々っ子に対するような云いようが無性に気に食わなくて。
グラスを睨みつけ、持ち上げてきつく目を瞑る。
ぐいと。一息に呷った。
「‥‥‥‥‥‥うぇぇ」
口を思いきりねじ曲げて感想を体現する。その様にロイは小さく笑って、斜め下にある頭を撫でた。‥‥‥直後、憎しみさえこもっていそうな勢いで足を踏み付けられる。
「‥‥‥酒癖というのはよく聞くが、牛乳癖が悪い人間というのは 初めて見るよ」
「大佐の女癖ほどじゃない」
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