chromium




「輝きが少し、変わったね」
「うわ、なんで気が付くかなコノヒト」

やっぱ変態?
失礼な呟きは寛容にも聞き流して少年に手を伸ばす。剥き出しの右肩は、僅かに、でも確かに、以前とは違う感触を伝えてきた。

「クロームを増やしたんだってさ」

他人事のような物言い。けれど返ってそこにこそ、彼が自らの整備士に寄せる信頼が窺えて、正直、面白くはない。だがそれとこれとはまた別の話で、告げられた内容には納得して軽く頷いた。なるほど、クロームの含有率が上がれば、焼きの入りが良くなる。外見的にはそれほど変わらないように見える無機質な稜線の、なのに無性にこの心を掻き立てる、炙られたような深い色味は、そのためか。
しかし。

「ということは、強度は下がった訳だ」
「まあね」

思い当たった、クロームのデメリット。大袈裟に竦められた肩に眉を顰めた。何もかも解っているような顔をしながらその実、何も解っていない少年。

「勇気と無謀を、履き違えないようにしたまえよ」

柄にもない忠告が口を衝いて出た。

「大佐こそ、無理ばっか通してると、そのうち道理が跳ね返ってくるよ」

全くだ。跳ね返ってきた言葉に苦く笑う。
クロームが生み出す鈍い輝きに顔を伏せれば、金属の味が舌を灼いた。










クロム。クロム族元素の一つ。記号 Cr 原子番号二四。原子量五一・九九六。
一番初めに書いた鋼。ぎこちない…

...030524up

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