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caesium
覗き込んだ扉の奥、真理の淵は黒よりも暗い藍色の。
深く深く深いその底から伸びる腕に瞳を固く閉じ、
「オレはまだ、大丈夫‥‥‥」
呟けばそれに引かれるように意識が急浮上した。
「何が『大丈夫』なんだね?」
「うおッ!?」
目を開けた途端のアップは心臓に悪い。
一歩退きたくてもソファに身を埋めた姿勢じゃあ適わずに、まあ仕方がない、相手に退いてもらうことにする。
「‥‥‥目覚めの挨拶にしてはいただけないが?」
「あ、そっか。おはよう大佐」
着痩せする腹筋を蹴り飛ばそうとした足は直前で掴まれて、
「‥‥‥‥‥‥おはよう」
ポイッと放されて降ってくる。今日の天気は足のち溜め息アーンド顰めっ面。で。
「おやすみ〜」
ひらひらと片手を振ってまた目を閉じた。その向こうでちょっと止まった空気と、もうひとつ、大きな吐息。
どうやら今日は土砂降りらしい。溜め息出血大サービス。それに、
「‥‥‥おやすみ」
おまけみたいに降ってきた。頭の上に、大きな手のひら。
藍の淵に吸い込まれるように意識が遠ざかる。
でも大丈夫。何を見ても、何も見なくても、
もう一度ここに戻ってこられることだけは確か。
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