|
iron
鉄とは元来、著しく酸化しやすい金属だ。
酸化した表面は錆を生じ、内部に向かって腐食してゆく。
しかしその反面で展性・延性に優れる屈指の金属でもある鉄は、炭素を含ませることで鋼となり、より強固にその構えを変える。
そしてその鋼の、硬度を更に上げるならクロームを。
強度を上げるならニッケルやバナジウム、耐摩耗性にはマンガンを。
耐食・耐熱性を上げるためにタングステン、コバルトなど、用途に応じて、よりそれに特化した金属を取り込むという形で必要な性質を高めていく。
けれど当然のこと、過ぎたるは及ばざるがごとし。
片端から放り込めばよいというものではなく、それで得られるのはただ脆いだけの屑鉄だ。
打たれる前の鉄のような子供に火を入れた。
斜面を転げ落ちる雪玉のように、出会う全てを取り込んで育っていく少年。
取り入れたそれらが彼を鍛える糧となるか、それとも、打ち砕く槌となるのか。
全てが終わったとき、そこに残される鋼を見てみたいと思う。
炉の火は既に入れられた。
君を鍛えていくのは‥‥‥
「君自身だよ、鋼の」
視線の先に、真剣な顔で分厚いファイルにのめり込んだきり顔も上げない少年。
見てみたいと思う。この少年の、行き着く先を。
|