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francium
「大佐ー、これ土産ね」
然したる感慨もなさそうな言葉とともに、けれど慎重に机上に置かれたそれに目を向ける。
ガラス細工の小さな置物。何というか、間の抜けた顔をした鳥の。
それともうひとつ、水らしき液体の入ったグラス。
「水飲み鳥か」
「そっ」
頷いた少年が鳥の頭を小突いた。布製のシルクハットに包まれた頭部が、ことん、とグラスへと傾く。
「ここに来るちょっと前に見つけてさ、つい買っちゃったんだけど、持って 歩いてても意味ないし」
で、ここ近かったから。
云って小さく笑う少年の視線の先で、鳥はこつん、こつんと水を飲んでは起きあがりを繰り返す。
その体内を満たす琥珀色の液体は、色からしてウイスキーだろうか。
「スゴイよなあ、永久機関」
当初の仏頂面はどこへやら、瞳を輝かせて見つめる姿に苦く笑い、老婆心ながら一言、
「半永久機関、だろう?」
「まあそうだけど」
入れた訂正に肩が竦められる。それでも、なおも逸らされることのない視線を追ってみた。
始めの一押ししかされていないのに、まだ動き続けているガラス製の鳥。帽子が吸い上げた水が蒸発する際の気化熱によりガラス管内の気圧が変化し、封入された揮発性の液体が移動することによって動く、というのが水飲み鳥のメカニズムで、単純にそれだけを見るなら永久機関として成立しそうだが、実際には、太陽光などの自然エネルギーの影響が除外されない限り、成り得ない。永遠たれと望まれ、期待され、けれどそうは在れなかったもの。
‥‥‥手を伸ばして持ち上げる。付いてくる視線。それを承知の上で、螺子状になっている頸部を捩り開けて火を着けた。
「あ」
高く燃え上がり、一瞬で炎は消える。気化したエタノールの香りだけが残される。
怒り出すかと思われた少年は、しかし、残念そうに一言洩らしただけだった。
「あーあ。折角ハボック少尉に貰ったのに」
「‥‥‥職場に何を持ち込んでいるんだあの男は」
刹那で消える永遠の中に、彼が見ていたモノを、訊いてみようとは思わなかった。
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