gallium




「あれ、珍しい」
「来ていたのかね」

出迎えた声に、常になく抑えた声音でロイは応えた。
苛立たしげなそれにエドワードは軽く眉を上げる。本当に珍しい。
外出から戻ったばかりのロイは、エドワードの見遣る先、手荒く外套を脱いでハンガーに放った。
バサリ、重い音を立てて辛うじて引っかかる。

「正装なんて、何かあったワケ?」

続けて軍帽の鍔に手をかけたロイに問いかければ、返事は一瞬の沈黙の後に来た。

「‥‥‥別に、くだらない式典があっただけさ」

そして深く息をつく。

「ふーん‥‥‥」

そんなものかと頷いて少し、エドワードはニンマリと笑う。

「見なかったことにしてあげようか?」

色々と問題アリなその態度を。
その代わり、と持ち出そうとした少年に、

「こういうときは」

取った帽子をロイは被せる。そのまま目深に引き下ろす。

「何も云わずにそうするのが大人というものだよ」

軍帽の硬い布越しに、小さな頭が僅かに揺れた。
鍔に隠されて、その表情は見えない。










ガリウム。土類金属元素の一つ。記号 Ga 原子番号三一。原子量六九・七二。
国旗シリーズその4。で、一区切り。

...040219up

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