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mercury
心の代わりに金塊を
血の代わりには水銀を
「成人男性の躯に流れる血液の総量が約5リットル。それを全て水銀に入れ替えたとして、常温を15℃とすると、真夏で30℃超えた日には倍近くに膨張するってこと? そりゃあすっごい高血圧だね大佐。今のウチから塩分控えといた方がいいよ。確実に頭の血管ブチ切れる」
ってことで、これは没収ね。
ロイの昼食として用意されていたランチプレート―――溜まりに溜まった書類を片付けるために、食事を取りに行く時間さえも削れとの中尉の無言の圧力だ―――を片手で取ると、エドワードはすたすたと部屋を出て行った。
バタン。
些か乱暴に閉じられたドアを眺め、
「さて‥‥‥」
ロイは口を開く。
「今回はどんな地雷を踏んだかな」
心の代わりに金塊を。
血の代わりには水銀を。
そうしてひとつずつ入れ替えて行けば、いつかは手に入れられるのではないかと夢み、試みた男がいた。 老いも滅びもしない躯を。
そんな話を、敢えて彼へと持ち出したことに、裏がなかったなどとは勿論云わない。
けれど、
「逆を極めてこそ、解ることもあるかもしれないよ?」
大きなお世話だ、と。云われてしまえばそれきりなのだが。
「昼食を取りそびれたな」
呟いて目線を戻せば、山と積まれた紙束は相変わらずで、溜め息をつく。
少しだけ考えて。
立ち上がり、去っていった背を追った。奪われた食事を口実に。
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