indium




「軍服って楽だよね」

前触れもなく発された台詞は、些か疲れた響きのそれ。

「なんてったって、身分証明の手間がかからない」

続いた言葉にああ、と思う。これはまた入り口で一悶着起こしたか。

「配置替えあったときにはさ、一言云っといてくれない? 大佐権限でさあ」
「見落としそうに小さい少年が来たら、噛み付かれる前にここへ通すように、
 とでも?」
「おし、そのケンカ買った」

ガシ、と拳を逆の手のひらに打ち合わせる。そんな少年に提案をした。

「何なら、君も着てみるかね?」

即、断られるかと思ったものの、

「いいの?」

予想に反して、返ってきたのは興味深げな瞳。乗って話を続けることにする。

「国家錬金術師は軍人ではないが、大総統下にあることに変わりは
 ないしね。身分詐称にはあたらないだろう。ああ、でも」

少し、思案するように言葉をためる。

「他になんかあんの?」

首を傾げる相手に笑いかけ、

「サイズがね。Sから5Lまでとりどりに揃っているが、生憎、Mはなかったように
 記憶している」

云えば、怪訝そうに眉が寄せられた。

「はぁ? Mがないなんて有り得ないだろ?」

そう、それは勿論だったが。

「Mediumはあるがね。Minuteはない」
「‥‥‥識別困難なほど小さいってぇ?」

地を這う声音にふふふ、と不気味な笑いが続き、

「誰がウルトラマイクロドチビかぁっ! 表に出やがれ、そのムダな身長
 半分にしてやる!!」

キシャーッと叫んだ少年にポンと手を打つ。

「そうか、Microでも良かったな」
「良いワケあるかーッ!!!」










インジウム。金属元素の一つ。元素記号 In 原子番号四九。原子量一一四・八二。
炎色反応シリーズ第4弾。
紛うことなき屁理屈。

...031116up

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