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iridium
「同害報復と等価交換は別モノだろ?」
同害報復とは、目には目をのくだりでよく知られるそれだ。
本来は『加害者はそれと同等の罰を受けるべきである』とのものであったその条文が、『被害者本人がやり返せ』のように解釈されて最早長い。
「殴られたからって殴り返したらチャラになるか? それで一体何を得る? 報いてやったっていう気の満足をか? どっちにしたってそれはされたことと 等価にはならない」
痛み分けと等価交換は異なるだろう。色々な意味で。
そう主張すれば、受けた男は何でもないことのようにさらりと云った。
「なら等価を定めればいい」
「って?」
どういう意味だよ? 訝しく見上げる。
それに少し考えて、男は、名案を思いついたとでも云いたげに微笑んだ。
「例えば、こういうのはどうだね? 君が私を一回殴るにつき、口づけを ひとつもらおうか。君から私への、ね」
「‥‥‥何ソレ?」
「いつか云っていただろう、私を『ゲンコでボコる!』と」
云われれば確かに云った気がする。というかいつも思っている。勿論今もだ。
「君は私を殴ったという満足を得、私は君からのキスという代価を得る。 どうだい、これなら等価交換が成立するだろう?」
満足そうに頷く男を蹴り飛ばしてやりたくなる衝動を根性で堪えた。ここで蹴ろうものなら、それこそ何を云い出されるか分からない。
「やめとくよ」
ひくつくこめかみを押さえ、げっそりとエドワードは云った。
「何かオレばっか一方的に疲れるような気がする」
「それは残念だ」
その言葉が本当に残念そうで、今度こそ男の足を踏み付けた。
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