nickel




蝕まれてゆく感覚に抗う。
消えゆく己を水際で保つ。





「喰われてく気がするんだ」
「私に?」

呟きにその主体を問えば、無言で爪を立てられた。
小さく眉を顰め、口端だけで笑う。

「そんな風には見えないがね」

見下ろす躯に落ちているのは、切創、刺創、稀に銃創。
咬創もあるにはあるが、それが今の話と何ら関係を持たないことは、付けた自分が知っている。

「実際食われてたら、今頃オレはここにいないって」

呆れ声で云った少年が、もういい、と続けようとしたのを口を塞ぐことで遮る。

「‥‥‥食われてしまうのも、手かもしれないよ?」

そして囁いた。承けて、険しくなる眼差し。

「冗談だろ」
「まあね」

ひょいと肩を竦める。そこに、仕返しのように噛み付かれた。





蝕まれてゆく感覚。
消えゆく己。
『創り出せる』という錯覚の生む、大間違いの全能感。
呑み込まれてしまったら、きっと最後。










ニッケル。鉄族元素の一つ。元素記号 Ni 原子番号二八。原子量五八・七一。
練金は組み換えであって創造ではなく、されど徒手にその力は果てなく甘く。
合金鋼で6本行きます。これが1/6。課題はニッケル鋼の売り、耐食性。

...030611up

back