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phosphorus
「ちょっと見せてよ、それ」
彼が指差したのは、外しかけていた手袋だった。一瞬迷ったが、好奇心に輝く瞳に負ける。
「何が仕込んであんの? セリウム? それとも、リン?」
流石と云おうか当然と云うべきか、発火布の仕組みは既にほとんど読まれているらしい。
セリウムは鉄と発火合金を創り、リンもまた、ある種の薬剤との摩擦によって、炎を産む。
焔の錬金術師と呼ばれはすれど、何もない空間から炎を生み出すことは出来ない。
どうしても、きっかけとなる火花が必要となる。そこで選んだのが発火布製の手袋というこの現在の形で、云うなれば、この手袋を着けていて錬金術師でさえあるならば、誰でも焔の錬金術師たり得るということでもある。といっても、十把一絡の錬金術師に軽々しく出来る芸当ではないとは自負しているが。
だが例えば、天才とされるこの少年にならば。
可能だろう。思えば、複雑に感じる心がないではない。
「さてね」
はぐらかし、手袋を持つ彼の手を取った。そこにも存在する、けれど発火布ではない手袋を引いて外せば、生身には有り得ない光沢が現れた。金属製の指先に口づける。
「君の身長と引き換えに教えてあげよう」
囁く。途端に寄せられた眉根が無性に愛しかった。
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