ruthenium




「愛と勇気が友達かね」
「何かヤなフレーズなんだけど、それ」
「嫌味なのだから当然だろう」

読み終えた報告書を机上に放ち、肘をついた右の手でこめかみを押さえる。

「正義感大いに結構!と云いたいところだが、」

他人事のような顔をした少年を手招けば、怪訝な表情を浮かべながらも数歩、歩み寄ってくる。
その少年の、

「そろそろ搦め手のひとつも覚えたまえ。でないと」
「ッげほ‥‥‥!」

首を机越しに掴み取った。衝撃に噎せるのに構わず、すぐ近くまでその顔を引き寄せる。
この手を外そうと藻掻いた腕を逆の手で押さえる。睨みつけてくる金の瞳を目が合った。
ひたと見据えて云う。

「君に、別れを告げねばならなくなる」

この手で。
喉を取った掌に力を込める。見返す視線が僅かに揺らいだ。

「君が目指しているのは民衆の英雄かい?」

それならば好きにやるといい。讃えられ、担ぎ上げられ、遣い潰されて果てればいい。
だが、そうでないなら。

「綺麗に生きたいなどと、今更、考える方が間違いだ」

叶えたい一番の望み以外のために、力を尽くす余裕があるか?
‥‥‥見開かれた瞳が、確かな意思を持って光を強める。
苦しい体勢に喘いでいた唇が笑みの形に歪んだ。

「誰に云ってるつもりだよ」

そして云った、可愛げのなさ過ぎるその一言。

「‥‥‥健闘を祈るよ」

そんな言葉で締め括って、捕らえた躯を解放した。
あのまま頸骨をへし折ってしまっていれば良かったと、いつか悔やむ日が来ないことを祈った。










ルテニウム。白金族元素の一つ。元素記号 Ru 原子番号四四。原子量一〇一・〇七。
国旗シリーズその2。
高貴と率直の白、名誉と純潔性の青、愛と勇気の赤、だそう。

...040216up

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