selenium 亡き母に脚を奉じ 弟のため腕を捧げ 愛おしき人々の元に心を遺し そして君に残されたのはただ前だけを目指すバネ仕掛けの躯。 「それだけでもいいから」 隣で眠る小さな躯。解かれたその髪に指を添わせて呟く。 「ここに置いていって欲しいと思うのは、身勝手か」 唇を歪めれば、寝台に起こした半身の分の闇が小さく揺らいだ。 窓から射し込む月光に、己の影が少年を塗り潰す。 君と換えられるだけのモノが、はたして私に有っただろうか? 交換に何を与えれば、この腕に君は墜ちてくる?
back