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titanium
「大佐の声は響きがシツコイ」
用件を終えて受話器を下ろした男は、その謂われのない非難に顔を上げた。
ソファに俯せた小さな姿に目をとめる。
「起きていたのかね」
「さっきからね」
よ、と軽く勢いをつけて躯を起こす。少年は胡座をかいて目を眇めた。
「下の声が煩くて目が覚めた」
そして欠伸をひとつ。昨夜も明け方近くまで文献を漁っていたらしい少年は、ここでその続きに取り組んでいた最中にとうとう眠気に抗いきれなくなったようで、己の両腕を枕に暫しの仮眠を貪っていた。大きく伸びをして唸る。
「煩い、かね? 私には何も聞こえないが」
確かに少しざわついている気配はあるが、煩いというほどでもない。
疑問を投げた男に、
「一月も前の報告書を今頃出す奴があるか、って誰かが怒ってた」
大佐は大丈夫?
にやり、と聞いてくる少年は、どう考えても心配しているのではなく面白がっている。
嘆息して男は問いを重ねた。
「君はそんなに耳が良かったかな」
「耳っつーか」
云いつつ、目線の高さまで右腕を持ち上げる少年。
「コレがさ、拾うんだよね」
音という振動に、金属は鼓膜よりも遥かに敏感に共鳴する。
金属製の腕が、脚が。拾い伝える様々な物音や人の声。
「人間の声ってのは基本的にノイズばっかなんだけどさ、大佐の声はそれが 割と少ない。だから残るんだ」
耳に届く声が途切れても、まだ揺らされ続けているような。
そんな煩わしいような、むず痒いような微妙過ぎる感覚。
それを表現しての最初の台詞なのだと告げた少年に、男は何とも云えない顔をして‥‥‥
困ったように笑った。
君の声に揺さぶられたと、感じた。
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