|
tungsten
「頭に血が上りやすいのが君の欠点だね」
溜め息混じりに男は云った。その目前に、一通の報告書。
「じゃ、大佐の欠点は冷血なトコ?」
軽く肩を竦めて少年が返せば、殊更な笑顔が向けられる。
少年も満面の笑みで応じた。
「だーッ、やめ! ケンカ売ってんの大佐?」
痺れを切らした少年の声が、膠着状態を破る。
「人が親切にも忠告してやったというのに、喧嘩を売ってきたのは君の方だよ」
心外だ、と不満を示す男。
「へー、アレが親切だったんだ? 全っ然!分かんなかったよ」
「少し理解力が足りないのではないかね?」
「ヒトに理解力要求する前に、自分が分かりやすく喋る努力をしなよ」
「それは怠慢だろう?」
「アンタのね」
そして繰り返す、傍目にはひたすら和やかな笑顔の応酬。
きっかけとなった書類のことなど、既にどちらの頭にもなかった。
|