tungsten




「頭に血が上りやすいのが君の欠点だね」

溜め息混じりに男は云った。その目前に、一通の報告書。

「じゃ、大佐の欠点は冷血なトコ?」

軽く肩を竦めて少年が返せば、殊更な笑顔が向けられる。
少年も満面の笑みで応じた。



「だーッ、やめ! ケンカ売ってんの大佐?」

痺れを切らした少年の声が、膠着状態を破る。

「人が親切にも忠告してやったというのに、喧嘩を売ってきたのは君の方だよ」

心外だ、と不満を示す男。

「へー、アレが親切だったんだ? 全っ然!分かんなかったよ」
「少し理解力が足りないのではないかね?」
「ヒトに理解力要求する前に、自分が分かりやすく喋る努力をしなよ」
「それは怠慢だろう?」
「アンタのね」

そして繰り返す、傍目にはひたすら和やかな笑顔の応酬。
きっかけとなった書類のことなど、既にどちらの頭にもなかった。










タングステン。クロム族元素の一つ。元素記号 W 原子番号七四。原子量一八三・八五。
タングステン鋼は耐熱鋼。合金鋼6本目で、これで打ち止め。
合金鋼と銘を打つなら本当はクロムも入るんですが、アレはもう書いちゃってるので除外となりました。

...030615up

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