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boron
「チェスの一勝負でもどうだね、たまには?」
「そんなヒマないね」
「そうか‥‥‥負けが決まっている勝負などしたくないか。それはすまない、 配慮が足りなかったな」
「その口、二度と開けないくらいヘコませてやる!」
などという高度に知的な会話から始まったゲームを、もう小一時間も続けている。
正直、意外な展開だった。相手の性格に加えて直前の会話だ。予想していたのは、戦略の欠片もない攻めの一手。けれどこれがなかなかどうして、練った手を使ってくる。
眉根を寄せ、真剣に盤上に見入る少年を見て、思う。報告を済ませて早々に部屋を去ろうとした背中に、戯れにかけてみた誘いの言葉だったが、どうやらそれは、意外な成果を上げてくれそうだ。
「チェック」
先に宣したのはロイだった。少年の表情が、ひどく悔しげなものになる。
席を立ち、足取り荒く出口に向かう少年を、今度はロイも引き留めなかった。
去り際に振り返って、
「次は勝つ!!」
「いつでもどうぞ」
指を突き付けてがなる声に、余裕綽々に見えるだろう笑みで応じる。
『次』は存外に近そうだ。
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