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bismuth
「納得がいかないという声をしている」
『別にー』
少し雑音の混じる電話越しの返答は、不機嫌さを隠そうともしない子供の声。
『そんなもんなんだろ、軍なんて』
少し前に彼が関わった事件。その残務処理についての話だった。
出来事の規模としてはそう大きくもないものだったが、関係者に中央の上層部の身内がいた。
後はまあ、推して知るべしといったところだ。こちらから手を回してどうにか出来ないこともなかったが、如何せん、時期が悪かった。中央からの査察官がうろついている中で渡るほどの綱ではなかったのだ。怒鳴られて悦ぶ趣味もないので、電話の相手には黙っているが。
「消化しきれない感情なら、昇華させてしまえばいい」
『何それ、ジョーク? くだらねぇ』
「得てしてそういうものだよ、世の中など」
先の相手の言葉を引用して皮肉った。「そんなもん」な軍属はお互い様だ。
「後世に残る芸術作品の大半は、その昇華のたまものだ。消化不良で 愚痴をこぼすより、何とも前向きな折り合いの付け方ではないかね」
『‥‥‥』
電話の向こうは無言。
「都合の良いことに君は研究者だ。新しい理論のひとつも華々しく打ち立て たまえ。さぞかしすっきりといくことだろうよ」
『‥‥‥‥‥‥』
「鋼の?」
気が付けば電話は切れていた。
まあいい。半分は八つ当たりだ。
「世にはびこるのは、喰えないものばかりだよ、鋼の」
届かない回線に乗せて云う。
消化不良などそれこそお互い様だ。
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