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dysprosium
信じてもいないものに誓いを立てたところで何になるのか。
「愛と貞節しかり証言の真実しかり、口先だけなら幾らでも云える」
「だからそうなんないように宣言するワケだろ?」
「その挙げ句がこれかね」
目前まで飛んできた紙飛行機をロイは摘んで止めた。そのままグシャリと握り潰して逆の手を僅かに動かす。握った手を開けば、そこにはもう何もない。
「一番いい出来だったんだけどなあ、それ」
灰さえ残らなかった自信作に不平を云うエドワードの手の中には、新たに折りかけの紙飛行機がひとつ。部屋を見回せば、ロイの机の周囲に両手ほどの数の紙飛行機が散乱していた。
「ゴミを散らかすな」
「どうせ燃やすんなら、有効利用しようと思って」
大佐にクリーンヒットしたら楽しいよね。にやりと笑ってエドワードは続きを折りだした。使っている紙はチラシでも白紙でもなく、とある裁判の記録だ。
「偽りだらけの証言。裁判にかけた時間と人員と記録用紙の大いなる無駄だ。公費を使っている分、浮気者の婚姻届よりもタチが悪い」
嘆かわしい。ロイは苦くこぼした。神への誓いはリップサービスか。
誓いに背いて罰を受けることを恐れないならば、そもそも誓いを立てる相手そのものを信じていないのならば、誓いなどただの形式だ。中身のない単なる箱に過ぎない。
パシィッ。
響いた破裂音に、ロイは散らばる紙飛行機からエドワードに視線を移した。
エドワードの手元、紙飛行機がいつの間にか竹トンボに変わっている。木製の竹トンボというのも奇妙な話だが。
「こっちのほうがよく飛びそう」
で、当たったとき痛そう。愉しげに竹トンボに手をかけたエドワードを、
「時に鋼の、」
眉を顰めたロイが呼んだ。
「君の錬成の構えが不快なんだが、どうにかしてくれないか」
合わせた手のひらがまるで祈りのようで気に障る。誓いを立てる神も持たない身で。
「アンタの錬成は愉快なんだけど、どうにもなんないだろ?」
だから諦めろと肩を竦めるエドワードに、ロイはひとつ息をついて指を鳴らした。床に散った紙飛行機も竹トンボも全て燃やして消した。
偽りの誓いの残骸を何一つ残さずに。
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