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erbium
「ご多忙でケッコウだねえ」
云って大きくアクビをひとつ。
「よ、っと」
エドワードは軽く勢いをつけてソファから立ち上がった。
ぐるりと首を回してほぐす。二時間弱、本に没頭していたため、首から肩が凝っていた。
二時間弱。
部屋の主は帰ってこない。
エドワードが訪ねてきたときには既に不在だった。この部屋に通してくれた彼の部下によると、すぐに戻ってくるはずの用件ではあったらしい。けれどこの状況を見るに、出先で別の用事に捕まったか。
そもそも主の居ない部屋――しかも司令官室――に通り、なおかつこれほどくつろいでいていいんだろうかと思わないでもなかったが、まあ今更だ。
「お」
部屋の隅の観葉植物の前に歩み寄り、何となく座り込んでみる。肉厚の、エドワードの手のひらほどもありそうな大きな葉。下の方のそれに薄く積もった埃に、
「管理不十分」
にんまり笑う。顔を見たら云ってやろう。そう思って、ついでにその埃の上に、サインなんかを書いてみた。
他に何か暇潰しはないか。部屋を見回した目に留まったのは、部屋の奥、重厚な机の向こうに置かれた椅子だった。部屋の主がいつも座しているそれ。
「おおぉ」
この隙にと座ってみれば、予想を上回る座りごたえに歓声が出た。
「経費の無駄遣いだよな」
シルバーシートだからしょうがないのか。
主が聞いたら激しく顔を顰めるだろうことを呟きつつ、エドワードは椅子を反転させて窓を向く。贅沢な昼寝としゃれこもう。
ロイが戻ってきたときには、既に部屋には誰もいなかった。
自分が部屋を出たときとの違いはひとつ、窓に向けられた椅子、ただそれだけ。
書き置きも伝言も残さずに帰った訪問者に、ロイは小さく肩を竦めた。
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