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gadolinium
真実など約束など未来など、どこにもありはしないのに。
腕に納めた小さな躯。未発達なそれが己の背を越える日は、恐らく決して来ない。
服を剥ぐまでもなく伝わる異質な手触り。仮初めの片腕と片脚に順応して歩みを緩めた成長。
黒い輪郭に這わせた右手が、腰から上がっておとがいを捕らえる。淡い色調を裏切る強い瞳と視線が噛み合う。
永遠など楽園など、どこにもありはしないのに。
後頭部に指を突っ込んで編み髪を強引にほどく。引き攣れて痛みでもしたか、逸らされないままの瞳が僅かに歪んだ。
掴み取った髪はひんやりと冷たい。
この髪も、瞳も、皮膚も肉も骨もいつか朽ちて。
生臭い土の中、ただこの腕と脚だけが遺される。
本心など、どこにもありはしないのに。
泣きたいような笑ってしまいたいような、酷くくだらない気分で自分から目を逸らした。骨の浮いた肩口へ顔を伏せる。
「低い」
「ならどけよ」
「嫌だ」
抗議の代わりに踏まれた足で、踏んだ足を掬い上げる。荒場慣れした相手が体勢を立て直すまでのほんの一瞬、この腕に彼の全体重がかかった。
このまま攫って逃げようか、と。
そう考えたのもほんの一瞬。
「どこにもありはしないのに」
「何か云った?」
「いや‥‥‥」
黒服を剥いで中身に直に触れる。その片腕を辿り、ふと思いつく。
「君が死んだら、形見にこれを貰おうかとね」
腕の中、服の分更に小さくなった躯が身動いだ。
「鋼の?」
「‥‥‥なんか気持ち悪いから、アンタよりは絶対先に死なないことにする」
呆れた声音にくつりと笑う。
「それはいい」
心底そう思った。
そんな戯れ言に保証など、どこにもありはしないのに。
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