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holmium
トンネルを抜けたらそこは銃口デシタ。
そんなバカげたフレーズが頭をよぎる。
持ってきた報告書を10秒で突っ返されたのが1時間前。出直す手間を惜しんでソファに居座った。
すぐ宿に戻る気で荷物はほとんどアルに任せてきたから、紙とペンは部屋の主から強奪。
ついでに投げ寄こされた辞書を、床に落とすわけにもいかない、受け止めてしぶしぶテーブルの奥の方に置いた。
んで、誤字脱字文法その他を堅っ苦しくかつファジーにお偉いさん好みに修正する作業に打ち込むこと1時間。
ふと目の前に落ちた影に、何の用かと顔を上げた。その鼻先5pの距離に 銃口。
なんで二つあるんだろ、とぽけっと思ってたら段々焦点が合って一つになった。
真っ黒い穴の奥に螺旋が見える。取り敢えず寄り目でそれと睨み合ってみれば、
ガチリ。
撃鉄の起こされる音が顔を上げろと脅しをかけてきた。
「めずらしいもん使ってんね」
「たまにはね」
「人に向けちゃいけませんって教わらなかった?」
「人に向けずに何に向けるのかね?」
心底意外そうに聞き返してくる銃の持ち主に肩を竦めた。犯罪者の台詞じゃないのかそれは。
「で、なんでオレはそれを向けられてんの?」
「ちょっと面倒な仕事に手をつけていてね‥‥‥」
そこで一息、
「行き詰まった」
「んな理由でヒトに銃を向けるな」
云ってやれば、不満そうに鼻を鳴らされる。
「君がさっきからそうやって常識人ぶるのも気にいらん」
ごり、と額に押し当てられる冷たい感触。
「こんなんやって遊んでる間に、仕事進めようとか思わないわけ?」
金属に移っていく体温に目を細めながらウンザリと云った。
「思っていたら君などにかかずりあってはいないよ」
「仰る通りで」
お手上げをして同意を示す。頷いてやるには凶器が邪魔だ。
と。
「あ、じゃあさ」
冷えて頭が冴えたのかはたまた鈍ったか。思いついたくだらない代替案を提示してみる。
「オレがそっちをやって、大佐がこっちを片付けるってのは?」
返事が来るまでたっぷり十秒はあった。
「‥‥‥止めておこう。私がそんなに綴り間違いが多いなどと思われたら 一生の恥だ」
「一生の恥で悪うございましたね」
随分と真剣に悩んでいたくせに。唇を歪めれば、憎ったらしい笑い声と一緒に銃口が離れていく。
どうやら仕事に戻る気になったらしい。
邪魔が入って全く進んでいない己の課題に目を落とす。
溜め息が出た。
「いっそ両方とも大佐がやるってのはどう?」
「馬鹿なことばかり云っていないでさっさと片付けたまえ」
「アンタが云うかそれを!?」
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