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祈る言葉が浮かばぬ己に気が付いた。
「神に祈れ」
そう突き付けられたのは死を覚悟したそのとき。信ずる神を持たない身で、戯れに漏らすのは恨み言でしかなく、祈り方など知らないとうそぶいてみるも虚しく。










「大佐だったら、」
「愚問だね」
「あ、そ」

聞く前に斬られた問いを拾う気も起きずに口を噤む。ソファの上で膝を抱えて目を閉じた。

「‥‥‥‥‥‥交通安全、家内安全、健康祈願、金運向上、恋愛運に
 世界征服‥‥‥」
「安産祈願も付けるかい?」
「大佐じゃあるまいし」

バカげた羅列にさらにふざけたそれが増える。他の誰かにとっては真剣な祈りも、こんな風に口にすれば単なる戯れ言だ。
それとも、

「‥‥‥信じたくないだけなのかもな」

神を。呟いた言葉に、

「祈りなど」

投げ返されたのは、

「聞こえを良くしただけの、単なる欲望の発露だよ」

あまりにあまりな言葉に細く目を開く。

「アンタそれ、後ろから刺されないように気を付けなよ」

呆れて口にすれば、

「あいにく、刺すような輩には縁がない」

そりゃまあ確かに、そうかも知れないが。

「ま、オレだって、敢えてお近づきになりたいワケじゃないけどね」
「修道女とでも付き合うことになったら改めるさ」
「‥‥‥本当にいつか刺されるよ」

低い笑いに嘆息をした。










神を内包する全てのものに、最大級の敬虔なる敬遠を。










鉛。炭素族元素の一つ。元素記号 Pb 原子番号八二。原子量二〇七・二。
またか、な話です。

...060829up

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