radium




「大怪我をした猫を見つけてね。数年前の話だが」

唐突な話題に、エドワードは寝返りをうってロイを見た。

「なに、寝言?」

闇の中で目をこらす。隣の男は仰向いた姿勢で目を閉じていた。

「牙も爪も満足に生え揃っていないくせに、自信過剰で負けん気ばかり強い
 仔猫だ。そこが気に入って手を出したんだが」

やっぱ寝言か。ひとりで話を進めるロイに、エドワードは嘆息してまた背を向けた。構わずに寝直そうとする。

「早々に砂をかけられそうになった」

だが、話の続きが何となく気になって、ごろごろと転がって結局ロイを向く。

「首輪をつけて躾てやっても良かったんだが、それで従順になってしまうのも
 惜しい気がして、豪華な餌だけちらつかせて野に放したんだよ。戻ってくる
 なら良し、来ないなら諦めるつもりで」
「で、どうなったんだよ?」
「居着きはしなかったが、時々顔を見せるようにはなった」

愉しげなロイに、エドワードは肩を竦めた。

「なんか、アンタに気に入られたネコが気の毒」
「そうかい?」

そこではじめてロイが目を開く。瞳がエドワードを捉えた。










ラジウム。記号Ra 原子番号八八。原子量二二六・〇二五。
放射性→放つ、からぐいーっと。

...070311up

back