sulfur




「こうして指を弾く間を」

指の先に小さな火を灯し、ロイは云う。

「弾指というそうだ。10のマイナス17乗だな。その更に十分の一が刹那」
「へ〜。で、それがどうしたんデスかセンセイ?」

気の抜け切った声でエドワードは促した。

「東方の国の教えでは、一万二千弾指で一昼夜となるそうだよ」
「長いのか短いのか分かんねえ」
「まあね」

ソファに凭れていた上体を崩して、エドワードは俯せに転がった。顎を肘掛けに乗せて、怠そうな目を向ける。
ロイはその姿に苦笑しながら応じた。

「時はそんな僅かな時間の積み重ねだと説きたいのか、それとも、そんな瞬間
 に過ぎないと談じたいのか‥‥‥」

一万と二千、炎を見れば次の朝が来る。それは僥倖か、あるいは苦行か。

「どっちにしてもさ、」
「うん?」

己の手に視線を落としたまま応えたロイに、

「手が疲れるよね」
「‥‥‥‥‥だね」

なんとも気の抜ける感想をもたらしたエドワードは、

「鋼の?」

ソファに俯せたまま、いつの間にやら心地よげな寝息を立てていた。

「寝言か‥‥‥?」

いったいいつから。起こすべきかと考えて止める。
どうせ僅かな時間だ。










イオウ。非金属元素の一つ。元素記号 S 原子番号一六。原子量三二・〇六四。
サンスクリット語が起源らしい。
「弾指」を知ったときに、これは大佐でネタにするしかとひとりでうけてて変な人でした。
仏教と数学で扱いが少し違うので詳しい方はご勘弁を。

...060830up

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