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antimony
救いたかったのは本当で
救われたかったのも本当で
救えるわけなんてないと思ってて
救われたりなんかするわけないと嗤ってた。
建前とウソと言い訳とほんのちょっとの苦さがガラスのかけらみたいにシャラシャラ落ちて積もる。
それを踏みにじった血まみれの足で、けど進む。
助けてくれなんて声はどっかで混線して行方知れずに。
「大佐の助けなんかいらないね」
「ほう?」
随分な自信じゃないか。片眉を上げて見返す先に、不遜な少年の顔。
「なら、一人で勝手にするといい。私は見物人に徹するさ」
売り言葉に何とやらで大人気ない答え方をする。もとより手助けなど、するつもりもなかったが。
「一人じゃないけどもちろん勝手にやるよ」
「一人でないのなら、勝手などするものじゃない」
それでもつい働いてしまう老婆心。いつから自分はそんなに親切な男になったのか。云えば、不貞腐れたように返された。
「向こうが察してくれるからいいんだよ」
甘ったれた子供に呆れつつ、手元の紙片をひらひらと振る。
「ではこれも、勝手に察せと?」
今回の来訪の本来の目的であろうこれは、軍管理のとある研究施設への入館許可証だ。
それにサインを求めにきたのだろうに、それも忘れて、何を豪語しているのだか。
「いや、それは‥‥‥」
案の定言葉に詰まったエドワードを意地悪く眺めていると、暫く視線を彷徨わせてから、
「アンタもたまには人に優しくしたいんじゃないかなぁと思ってさ」
助けなどいらないと云ったその口でのうのうとほざく。
生意気で勝手な子供はそれでも、時折思い出したようにこの部屋を訪れる。
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