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それは単なる夢ではなく、単なる希望でなく、願望でなく、
拘泥でなく、未練でなく、妄執ですらなく、
ただの過去だ。たちが悪くて低俗な。
自分にまだ何かが出来ると信じていた頃の。
「君を見ているとときどき、自分の青かった時代を思い出して居たたまれなく なるね」
やれやれだ。これ見よがしに吐息をついて背もたれに身を委ねた。
「若かりし日々、の間違いじゃないの?」
「そこまで枯れてはいないよ」
茶茶を入れる子供はこちらを見もしない。本に顔を伏せたままおざなりに話を続ける。
「居たたまれないってんなら、見なきゃいいだけの話だろ」
そうやって我武者羅に進めば何かが出来ると信じている子供。
「ところがそうもいかなくてね」
その後ろ頭に云ってやる。
「君が次に何をしでかすのかと思うと目が離せん」
「野次馬根性で?」
「親心と云ってくれないか」
「‥‥‥やっぱ枯れてるよ、アンタ」
少しだけ振り向いて、口の悪い子供が笑った。
ただの過去。たちが悪くて低俗で青過ぎる日々。
それを目映いと感じる自分自身こそ、きっと単なる幻想だ。
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