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thallium
持ち上げた本から何かが落ちた。
「あれ?」
「何だね?」
かけられた声に、エドワードは拾い上げたそれを見せる。
「栞か」
興味が失せたと云わんばかりにロイは己の仕事に視線を戻した。
けれどエドワードは逆に興味を惹かれた様子で、手にした紙片をしげしげと見る。
「四つ葉だよ、珍しい」
挟まっていた学術書には不似合いな、手作り然とした小さな栞。
それに貼り付けられたクローバーは、幾分色褪せてはいるがまだ緑を残していた。
立ち上がりかけていたソファに体を崩して、何が楽しいのか栞に見入っているエドワードを、
仕事の合間に見るともなく眺めていたロイに、
「例えば、この葉っぱとか」
栞に目を置いたまま、エドワードが口を開いた。
「なんで緑に見えるのか、初めて知ったときはなんかショックだった」
そう云う割に楽しげな口調で、思い出話のように語る。
「緑の光だけを反射する、それ以外を吸収する、って、何だか緑だけ拒否 してるみたいじゃないか? でもその結果、緑色として見る目には映る。 否定したものに染まるのか、染まりたいから否定するのか。どっちにしても 夢がねえ」
「嫌よ嫌よも好きのうち、というやつかな」
「そんなん考えてたら、アルが云うんだ」
ロイの入れた茶々を完全に無視してエドワードは続ける。
「他の色を受け流して、緑だけを選択してるから、だからこんなに緑が 鮮やかなんだろうね、って」
そして大きく溜め息をついた。
「ほとんどおんなじ育ち方してんのに、何でこんなに考え方が違うのかなあ」
本の適当な場所に栞を挟み直して、ソファに仰向けに寝転ぶ。手を頭の後ろで組んで、エドワードは目を閉じる。
「私には、君の考え方のほうが興味深いがね」
「オレはアルのの方が好き。気が合わないね、大佐」
「そうかね‥‥‥」
薄目を開けたエドワードにあっさりと断じられ、ロイは苦く笑った。
己の纏うその色は、選んだそれか、拒んだそれか。
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