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zinc
言葉で伝わるものなんてほんのちっぽけで、
しかも、思った通りになんか伝わらない。
誤解曲解深読みに勘違い。
なんて不自由なコミュニケーションツール。
「今日は随分と口数が少ないね」
本を一冊分、読み終えるだけの時間が経ってからかけられた声にも、相手は黙ったままだった。
声は聞こえているだろうに、次の本に手を伸ばすだけで顔も上げない。
「鋼の?」
重ねて呼ぶロイに、
「今ちょっと、言語的な情報伝達に抵抗してんの」
端的にエドワードは答える。
「ほお」
ロイの感想はそれだけだった。
「鋼の」
もう一冊分の時間を置いて、再びロイは声をかけた。
エドワードはまた次の本に手を伸ばしつつ、しかし今度は目だけで振り向く。
それに朗らかに笑いかけ、
「好きだよ」
「はぁ!?」
ロイは告げた。エドワードが思わず声を上げ、持ちかけていた本を取りこぼす。
バサリと床に開いて落ちた。
希少な本のそんな状態を気にもとめず、ロイは愉しげに続ける。
「さあ、好きなだけ深慮でも勘繰りでもしたまえ。君が静かなせいで 暇なんだ。私はそれを見て楽しむ」
その云い様に、エドワードは思いきり顔を顰めた。
「アンタのそーいうところが大っ嫌い」
「つまり、それ以外は大好きだと」
「何でそうなるかな」
理解出来ない。苦虫を噛み潰したようなエドワードに、
「君に倣って、言外の情報を読み取ってみたのさ」
追い打ちをかけるロイの笑顔はあくまでも明るい。
「大佐のは妄想だろ」
「そうかな」
「じゃなきゃ幻覚だ。あーもう、悩んでんのがバカバカしくなってきた」
「悩んでいたのかね」
気付きもしなかったようにロイは云う。わざとらしいその様に、憎々しげにエドワードは吐き捨てる。
「最初っからそう云ってんだろ」
「態度で、かい?」
そう云われて思い返せば、確かに口に出しては何も云ってはいない。
気付いてエドワードはむっつりと黙り込んだ。
「言葉は大事だろう?」
云えば思いきり睨まれ、ロイは肩を竦めた。
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