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mercury
血も涙もない身だ。文字通り。
だから同情もしないし、憐れみもしないし、手を差し伸べるつもりもない。
ここに兄がいればさぞかし生き生きとした顔で追い打ちの一つや二つや三つや四つ、目の前で悲嘆にくれるこの障害物にかけていくのだろうけれど、そんなサービス精神も自分にはなかった。
だから取り敢えず、声をかけてみる。
「大佐、」
反響の混じる少年の声に、ロイはうっそりと顔を上げた。
雨。出動後。他の面々は後始末中。
その状況で最高責任者が呑気に落ち込んでいる理由など、ただひとつしかない。
フォローの言葉を期待する眼差しに気付きつつ、アルフォンスは罪のない声でとどめを刺した。
「兄さんから書類を預かってきました。
『雨でも署名くらいはできるだろ、ヨロシク!』だそうです」
すみません、失礼な兄で。
声音だけは心の底から申し訳なさそうに告げるフルメイルの、頭飾りの房が機嫌良さそうに揺れているのは気のせいかどうか。
「‥‥‥分かった‥」
「じゃあ‥」
元気を出してくださいね。
云い置いて部屋を出るアルフォンスの足取りは軽い。残されたロイの溜め息は深く、重かった。
血も涙もない身だ。文字通り。
だって鎧だもん。
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