water




「『水に流す』と人はよく口にするが‥‥‥」

軽く揺らしたコーヒーカップ。
そこに出来たほんの小さな渦に目を遣ってロイは呟く。

「水もまた様々な形で循環し続けるものと考えれば、流したところで結局
 いつか、目の前に戻ってくる」

それを喉に流し込み、

「そうは思わないかね、鋼の?」
「‥‥‥まあね」

ひとつ息をついて問えば、少し離れたソファでエドワードが肩を竦めた。

「で? どうすんのさ、アレ」

そして指差して云う。

「どうしようか‥‥」

二つの視線の先で激しく叩かれるドア。

「水に流してはくれないだろうな」
「無理だろ」

昨夜のデートの相手が、まさか同僚の恋人とはね。
嘆息したロイは、カップをコトリと机に戻した。察したエドが、慌てて壁際へと
下がる。





手袋をはめた指が鳴った。










四元素説から、水。
初出は2年とちょっと前です。小話。

...060905up

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